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生産性の格差は拡大を続けているのである。
経済成長の過程では労働市場でこのような不均衡が形成されてくるものといえる。工業ないし製造業でははやい技術進歩がみられ、それによって労働生産性が上昇していく。アジア諸国では前述したように、農業で労働生産性はかなりの速度で上昇してきているが、それでも製造業にくらべるとその上昇の速度はおそい。過剰人口をかかえる農業では技術進歩がおそく、労働生産性の上昇が製造業のそれにくらべて低くなっていることが常態であるといえる。
まさに、アセアン諸国は先進国の歴史的経験と同様に、経済発展の結果として農業問題が顕在化してきているのである。アセアン諸国の農業事情としてこのことが最も重要な事態といえよう。

 

2) 東南アジア農業発展の多様性
国民経済のなかでその重要性が低下してきているといっても、農業部門の経済成長率自体が決して低い訳ではない。農業部門の実質経済成長率をみてみると、インドネシアで1980−90年では3.4%、1990−94年で3.0%、タイでは4.0%、3.1%、そしてマレーシアでは3.8%、2.8%となっている。これらは途上国のなかで決して低い方ではない。但し、フィリピンは、1.0%、1.6%でしかなく、マクロの経済成長率の動向と同じく、やはりアセアン諸国内では例外といえる。
ここで注目しておく必要があるのは、このように良好な成長パフォーマンスを示しているアセアン諸国の農業発展パターンが決して一様ではないという事実である。各国の農業発展には、その国の歴史等に深く組みこまれた個性的な発展パターンが存在しているのである。そこで、インドネシアとタイとをとりあげて、その農業発展のパターンのちがいをみておくことにする。
インドネシアの核心域ともいえるジャワでは、熱帯島嶼部にある火山島という生態条件によって生み出される、豊かな水資源と肥沃な土壌の上で、水田サワーと屋敷地プカランガンの集約的土地利用をおこなう小規模家族農業が古くから展開してきている。そこでは、人口密度も高く、閉ざされた農村社会が歴史的に形成されていた。こういう人口稠密で閉ざされた地域に関しては、過剰人口を非農業活動に吸収させ

 

 

 

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